皆さん、「ドローン」という言葉の由来をご存じでしょうか?
実は英語で「雄バチ」を意味する言葉なんです。
プロペラが回るときの「ブーン」という音が、ハチの羽音に似ていることから名付けられたといわれています。
そんなドローンを使って、本物のドローン(雄バチ)を撮影するという、なんとも不思議な研究のお手伝いをすることになりました!
今回お声がけいただいたのは、長年ニホンミツバチの研究に取り組んでいる養蜂家の方。
研究テーマは……
「ニホンミツバチDCAにおける雄バチのコメット形成のドローンによる記録」
……はい?
何のことやら、さっぱり分かりませんよね(笑)。
実はこれ、知れば知るほど面白い、ミツバチたちの恋のお話なんです。

ニホンミツバチのメス(左)とオス(右)働きバチは全てメス。雄バチには針が無い。
空の上には、ミツバチたちの結婚式場がある!?
ニホンミツバチの雄バチは、春から初夏にかけての午後、女王バチとの交尾を目的に、空の上の決まった場所に集まる習性があるそうです。
その場所は「DCA(ドローン・コングリゲーション・エリア)」と呼ばれ、いわば空に浮かぶミツバチたちの結婚式場。
しかも、女王バチが現れると、多数の雄バチが一斉に追いかけ、彗星の尾のような集団を作ります。
これが「コメット」と呼ばれる現象です。
なんともロマンチックな光景ですが、雄バチたちにとっては一生に一度の大勝負!
ところが、ニホンミツバチのDCAはセイヨウミツバチに比べて高い位置に形成されるため、地上からその様子を間近に観察することは容易ではありません。
そこで登場するのが、我々のドローンというわけです。
36年越しの夢を、ドローンに託して
今回の研究の中心となるのは、盛岡市で1901年から代々続く養蜂家、藤原誠太さんと、その娘で石巻専修大学理工学部の講師を務める農学博士・藤原愛弓先生。


藤原誠太さんと娘の愛弓さん(鉄腕DASH‼ミツバチ企画の監修もしています)
藤原誠太さんは「日本在来種みつばちの会」の会長も務めていらっしゃいます。
今から36年前の1990年。
藤原会長は盛岡市の川留稲荷神社にあるケヤキの大木の上空に、ヘリウム風船を使って女王バチを上げ、ニホンミツバチの雄バチが集まる場所を確認しました。
当時、世界初となる画期的な発見だったそうです。
それから36年。
「あの場所で、雄バチたちがどのように集まっているのか、もっと近くで見てみたい」
そんな長年の思いを実現するため、娘の藤原愛弓先生とともに、新たな観察研究に挑戦することになりました。
そして、その撮影役として私たちSOARRECに声がかかったのです。
舞台は盛岡市中心部、樹齢300年超の大ケヤキ!
今回の調査場所は、盛岡市中心市街地にある住吉神社の境内。
ここには高さ約30m、樹齢およそ321年という立派なケヤキの大木があります。

実は藤原会長、36年前にこの大ケヤキの上空でも雄バチが集まることを確認していたそうです。
さて、最初の打ち合わせで研究内容を伺った私たち。
「なるほど、ドローンで上空のハチを撮影するんですね!」
……と、簡単に引き受けられる内容ではありませんでした(笑)。
何しろ場所は人口集中地区(DID)。
しかも、ドローンから長い棒を突き出し、その先に女王バチやフェロモンを取り付け、集まってくる雄バチたちを360°カメラで記録するというもの。
ドローンでハチを撮るはずが、ドローン自身が巨大なハチのような存在になる!?
いやいや、それ以前に、こんな長い棒を付けて本当に安全に飛ばせるのか?
まずはそこからの挑戦でした。
棒を付けたドローンが、まさかの振り子に!
そこで、長さ約1mの取り付け棒を試作。
まずは屋内で何度もテスト飛行を繰り返しました。


これが、なかなか一筋縄ではいきません。
機体から突き出した棒が少しでも揺れ始めると、その揺れが振り子のように大きくなってしまうのです。
普通に飛ばすだけなら何でもない操作が、今回はそう簡単にはいきません。
揺れを見ながら、反対方向への細かな操縦で振動を抑える。
そんな特殊な飛ばし方も練習し、少しずつ安定させるコツをつかんでいきました。
まさに、ドローン操縦の応用問題です。
そしてもう一つ、大切なのが安全対策と各種手続きです。
今回は人口集中地区での飛行に加え、機体に特殊な装置を取り付けるため、国土交通省への必要な申請を行い、許可・承認を得ました。
また、盛岡東警察署への飛行計画の提出をはじめ、関係各所との調整を実施。
住吉神社の瀬川宮司様にもご協力・ご指導をいただき、安全対策を重ねながら、5月から6月にかけて調査を行いました。
ミツバチたちは、何を目印に集まるのか?
さて、いよいよ本番です。
とはいえ、ただ女王バチを上空に上げて、雄バチが集まってくる様子を撮ればよい、というわけではありません。
そこは大学の先生が取り組む本格的な生態研究。

「集まってきたハチは、本当にニホンミツバチの雄なのか?」
「雄バチたちは、何を目印にこの場所へ集まるのか?」
「高さや時間帯によって、集まり方は変わるのか?」
こうした様々な疑問に対し、藤原愛弓先生が仮説を立て、条件を変えながら何度も観察を繰り返します。

私たちも、そのたびにドローンを飛ばし、空の上で繰り広げられる小さなドラマの記録に挑みました。
普段は風景や建物、人の動きを撮影することが多い私たちですが、今回は相手が体長わずか十数ミリのミツバチたち。
しかも舞台は地上30m以上の空中です。

いやはや、ドローン人生、何があるか分かりませんね(笑)。
(ちなみにミツバチへの影響を最小限に抑える様に配慮しながら飛行させています)
また、今回の取り組みはテレビ岩手のニュースでも紹介され、インターネットでもご覧いただけます。
日本在来種みつばちの会HP 主な活動・実績で動画をご覧いただけます♪
ぜひ、ミツバチたちの知られざる世界をのぞいてみてください!
「そんなこと、ドローンでできるの?」から始まる新しい挑戦
今回の研究に参加するまで、ドローンがミツバチの生態研究に役立つなんて、私たちも想像していませんでした。
ドローンは空から写真や映像を撮るだけの道具ではありません。
人が近づけない場所に行き、人の目では確認できないものを記録し、これまで難しかった調査や研究を可能にする。
そんな使い方が、まだまだ無限にあるのだと思います。
そして何より、36年もの間、ミツバチの不思議を追い続けてきた藤原会長と、その研究を引き継ぐ愛弓先生の情熱に触れられたことは、私たちにとっても貴重な経験となりました。
「ドローンでそんなこと、できるわけないよね?」
そう考えてしまう前に、
「ドローンで実現するには、どうすればいいだろう?」
そんな発想から、新しい可能性が生まれるのかもしれません。
私たちSOARRECは、これからも様々な分野の「やってみたい!」に挑戦していきます。
ドローンで何かできないだろうか?
そんなアイデアがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
一緒に面白いことを考えてみましょう!
